空き家をカフェに活用したい!その前に確認すべき行政手続き一覧
「相続した空き家をおしゃれなカフェにしたい」
「地域のコミュニティの場として、古民家をリノベーションしたい」
こうした声を、行政書士として現場で耳にする機会が増えてきました。
空き家活用の中でも「カフェにしたい」という要望は特に人気があります。
しかし、空き家をそのまま飲食店に転用できるかというと、決して簡単ではありません。
建築基準法や食品衛生法、消防法など、さまざまな法的手続きや確認事項が発生するからです。
この記事では、空き家を飲食店(主にカフェ)として活用したい場合に、どのような手続きや許可が必要になるのか、行政書士の視点で詳しく解説します。
空き家をカフェにするには、複数の手続きを並行して進める必要がある
まず前提として、「空き家を飲食店として営業する」場合、以下の3つの観点から行政手続きが必要になる可能性があります。
- ① 建物自体の使い方(建築基準法の用途変更)
- ② 飲食物を提供することに関する衛生面(食品衛生法)
- ③ 不特定多数が出入りすることによる防火安全面(消防法)
さらに、看板やのぼり旗を設置する予定がある場合は景観条例や道路占用の問題も関わってきます。
つまり、「飲食店営業許可を取ればそれでOK」ではないということです。
具体的に必要な手続き一覧(目的:空き家を飲食店に転用)
手続き・確認内容 | 担当部局 | 内容概要 |
---|---|---|
飲食店営業許可 | 保健所 | 調理場・手洗い・換気などの基準を満たす必要あり |
用途変更の確認申請 | 建築指導課 | 特殊建築物で床面積200㎡超の場合は申請義務あり |
消防設備の設置・届出 | 消防署 | 避難経路・消火器・火災報知設備などの点検 |
看板・のぼりの占用許可 | 土木事務所等 | 歩道を使用する場合など |
外観変更の景観協議 | 都市計画課等 | 歴史的建築物が多い地域では事前協議が必要 |
これらの手続きは、内容によって順番が前後したり、並行して進める必要があることもあります。
スムーズに進めるには、初期の段階で一度全体像を把握しておくことが重要です。
① 飲食店営業許可(保健所)
飲食店を営業するには、食品衛生法第52条に基づく許可が必要です。
空き家の場合、元が「住宅」として使われていたため、飲食店の構造基準を満たしていないことがほとんどです。
主な基準(例)
- 二槽式シンクの設置(洗い物用とすすぎ用)
- 調理場と客席スペースの明確な分離
- 食品保管のための冷蔵・冷凍設備
- 換気扇・排気設備の設置
- 内装材(床・壁)が防水・清掃可能な素材であること
対応のポイント
保健所では、事前相談(図面持参)を歓迎しているところが多いため、改修前に必ず相談しておくべきです。
🔗 出典:厚生労働省「営業許可制度の見直し」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/eiyou/hourei/20190529-02.html
② 建築基準法に基づく用途変更の確認申請(建築指導課)
空き家の登記上の「用途」が「居宅」のままである場合、それを「店舗」用途で使うと、**法的には「用途変更」**に該当する可能性があります。
用途変更が必要となるケース(法令)
- 変更後の用途が「特殊建築物」にあたる(例:飲食店、物販店など)
- 用途変更に係る部分の床面積が200㎡を超える
この2つの条件を満たすと、建築基準法第87条により、用途変更に伴う「確認申請」が必要となります。
なお、たとえ200㎡未満でも、建物の構造や接道状況によっては確認申請を求められる場合があり、必ず自治体の建築指導課での事前相談が必要です。
🔗 出典:国土交通省「小規模用途変更に関する改正制度」
https://www.mlit.go.jp/common/001299734.pdf
③ 消防法に基づく防火安全措置(消防署)
飲食店として使う場合、建物に不特定多数が出入りすることになるため、消防設備の設置や点検が必要になります。
主な対応項目(例)
- 消火器の設置
- 誘導灯の設置
- 火災報知器の設置
- 避難経路の確保(非常口の明示など)
火気(ガスコンロ・石油ストーブ等)を使用する予定がある場合には、さらに詳細な防火対策を求められることがあります。
消防法上の「防火対象物使用開始届出書」などの提出も必要です。
🔗 出典:消防庁「防火対象物関係の届け出」
https://www.fdma.go.jp/publication/rescue/post-3.html
④ 看板やのぼり旗を出したい場合の占用許可
空き家カフェの雰囲気づくりとして、おしゃれな立て看板やイスを屋外に置くことを検討する方も多いですが、それらが歩道や公道にはみ出す場合、「道路占用許可」や「道路使用許可」が必要になります。
- 道路法(占用許可)
- 道路交通法(警察署への使用許可)
無許可のまま看板を出していると、指導・撤去対象になることがあります。
⑤ 歴史的地域や都市景観区域での活用は、景観条例の確認も
京都市などでは特に、景観条例が厳しく設定されており、外壁の色、看板のサイズ、窓枠の素材などに制限がある地域も存在します。
対象区域に該当する場合、外観を変えるだけで「景観協議」が必要になることもあり、設計段階での確認が必須です。
空き家×カフェ開業をスムーズに進めるために
- ✅ いきなりリフォーム・改修を始めない
- ✅ 必ず自治体の各担当課に「事前相談」する
- ✅ 保健所・建築課・消防署などの窓口対応に不安がある場合は専門家に相談
- ✅ 行政書士・建築士・消防設備士などと連携しながら進める
行政書士に相談できること
行政書士は、以下のような手続きで皆さまのサポートが可能です。
- 営業許可や用途変更に関する事前相談・書類作成・提出代行
- 建築士や消防設備士など、他の専門職との橋渡し
- 地域条例の確認や制度の最新情報の提供
- スケジュールや見積もりの整理
まとめ|「空き家をカフェに」は夢ではない。でも手続きは慎重に
空き家を活用して飲食店を開業するのは、地域活性化にもつながる素晴らしい取り組みです。
ただし、法律上の手続きを踏まずに始めてしまうと、工事のやり直しや営業停止といった大きなトラブルにつながるおそれもあります。
「まずは何から確認すればよいかわからない」
「建物が古くて要件を満たせるか不安」
という方は、ぜひ一度ご相談ください。
行政手続きを通じて、空き家を安心・安全に活かす方法を一緒に考えていきましょう。
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