人に強制されること、自分の意思を貫くこと|どこまで干渉できるのか?行政書士が考える“自由”と“守り”
今日はいつもの実務的なところから若干離れます。
私たちは日々、無数の選択をしています。
どこに住むか、誰と付き合うか、何を契約するか、どんな終末期を迎えたいか──
それらは本来すべて、「自分の意思」で決められるはずのことです。
しかし現実には、「家族が決めたから」「親に言われて」「専門家がそう言ったから」
そんな理由で、本心とは違う選択をしてしまっている方が多く見られます。
法的な手続きを支援する立場である行政書士は、そうした“意思”と“干渉”のはざまで揺れる多くの人々と接しています。
この記事では、「他人がどこまで干渉できるのか」「本人の意思を貫くにはどうすればいいのか」を、実際の相談現場や法律の視点から深く掘り下げてみたいと思います。
自由な意思とは何か?──その判断は、思ったより繊細
法的な世界では、「本人の自由な意思であること」がほとんどの手続きの前提です。
遺言、契約、任意後見、離婚協議、財産管理、どれもこれも「本人の意思」がなければ成り立ちません。
けれど、その「自由な意思」は、果たして本当に自由なのでしょうか。
- 「本当は反対だけど、兄が強く言うから遺産を放棄した」
- 「施設の職員に任せればいいと言われて、よくわからないまま後見契約を結んだ」
- 「周囲の期待に応えるために離婚に応じた」
これらはすべて、外から見ると「本人が同意した」ように見えますが、
内側から見れば「納得していない」「追い込まれた結果」なのかもしれません。
法律上の“意思”とは、単に「書面にサインすること」ではなく、
「本人が目的・内容を理解し、それを望んでいるか」まで含めて問われるべきものです。
法律が認めない「強制」|詐欺・強迫・錯誤
民法では、他人の干渉により歪められた意思表示について、以下のような無効・取消のルールを定めています。
行為 | 内容の一例 | 法的効果 |
---|---|---|
詐欺 | 嘘の説明をして相手に誤解をさせ契約させた | 取り消し可能 |
強迫 | 脅しや圧力で意思に反して契約させた | 取り消し可能 |
錯誤 | 本人が内容を誤解していた | 条件により無効 |
つまり、表面上は「契約した」「合意した」としても、
その中身が「自分の意思」ではなく「他人の圧力」であると認定されれば、法的な効力は否定されうるということです。
「善意の干渉」は許されるのか?
ここで一つ難しい問題があります。
たとえば、本人の判断能力が徐々に低下している場合、
家族が「このままでは危ないから」と後見制度を利用しようとしたり、財産管理契約を結ばせようとするケースです。
このような“善意の干渉”は、果たしてどこまで許されるのでしょうか?
結論から言えば、たとえ善意であっても、本人が望んでいなければ契約させることはできません。
任意後見契約においては、契約時に本人が内容を理解しているか、公証人が厳しく審査します。
公証人が「本人の意思が確認できない」と判断すれば、契約そのものが成立しません。
同様に、遺言作成においても、「長男が言うから書いた」ような状況では無効とされる可能性が出てきます。
「周囲の期待」もまた、意思をゆがめる
干渉というと、暴力的な圧力や脅しを思い浮かべるかもしれませんが、
実際の現場では、もっと柔らかく、もっと見えにくい形で干渉が入り込みます。
- 「あなたにはこうしてほしい」と言われる
- 「周りはみんなそうしているから」と言われる
- 「家族のために我慢してね」と言われる
こうした言葉は、愛情や配慮に包まれているようでいて、
本人の意思をそっと脇へ押しのけてしまうことがあります。
他人の期待に応えることが“立派なこと”とされがちな日本社会では、個人の意思が見えにくくなる傾向があると私は感じています。
自分の意思を貫くには「準備」と「言語化」が必要
では、他人の意向に流されず、自分の意思を貫くためにはどうすればいいのでしょうか?
それは、ただ頑固に「NO」と言い張ることではありません。
法的に意味ある形で、意思を明確に示し、記録として残すことが必要です。
たとえば
- 遺言書:自分の死後にどう財産を分けるか、自分で決めて残す
- 任意後見契約:判断能力が衰える前に、信頼できる人に将来のことを託す
- 死後事務委任契約:葬儀や墓のことなど、死後の処理も自分で決める
- 離婚協議書:財産分与や養育費について、自分の意見を整理し合意を明文化する
こうした手続きを通じて、「これは自分の意思です」と言える証拠を作ることが、他人の干渉から自分を守る最も確実な方法になります。
行政書士は「誰の意思か」を見ている
私たち行政書士は、契約書や公正証書、協議書などを作成するプロです。
しかし、その本質的な仕事は、「誰の意思を文書にするか」を見極めることだと考えています。
- 「本当にこの内容で納得しておられるか」
- 「説明を理解しているか、時間をかけて確認できたか」
- 「誰かの影響で無理に話を進めていないか」
こうしたことを常に意識しながら、ご本人と丁寧に向き合うことを心がけています。
まとめ|他人の声より、自分の声を大事にしていい
- 法律は、本人の自由意思を最大限に尊重する
- 他人が干渉できるのは「本人の保護」が正当に必要なときだけ
- 詐欺・強迫・錯誤による契約は取り消しや無効となる
- 自分の意思を守るには、言葉にして記録に残すことが重要
- 行政書士は、そのプロセスを法律的にサポートする専門家です
📌 こんなご相談を多くお受けしています
- 親に言われたけど、本当は納得していない契約がある
- 家族が勝手に後見契約を進めようとしている
- 自分の老後・死後のことを、自分で決めておきたい
- 他人の意向に流されずに「自分の言葉」で文書を作りたい
どんなに小さなことでも、あなたの「本当の気持ち」を尊重する書類作成を、行政書士はお手伝いできます。
迷いのあるときこそ、一度立ち止まり、「これは本当に自分の意思か?」と問い直してみてください。
ぜひ、JR学研都市線沿線 松井山手駅より10分の阿保行政書士事務所へご相談ください。
当事務所はコストコ京都八幡倉庫店のすぐ裏です。
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まずはお気軽にお問合せください。
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