特定技能(介護)の受入体制と支援計画|要件・社内フロー【企業向け】
本記事は、介護分野で外国人材を受け入れる施設・企業向けに、特定技能の基本から要件・社内体制・支援計画までを実務中心に解説します。就労ビザのまとめ/申請取次も併せてご覧ください。要点:雇用契約の適正+受入体制(現場/生活支援)+支援計画10項目の実施・記録。この三位一体で許可・更新の安定度が決まります。
1. そもそも「特定技能」とは(介護分野)
- 在留資格「特定技能1号」:人手不足分野で即戦力となる外国人材を受け入れる枠組み。介護は特定技能1号の対象です(現時点、介護は2号対象外)。
- 在留期間:通算最大5年。更新は最長1年など段階的。
- 家族帯同:原則不可(例外は限定的)。
- 転職:同分野内で一定の手続きを経れば可能(契約違反・倒産等の保護規定あり)。
技能実習2号修了者などは一部試験免除のルートあり。詳細は採用元の経歴により異なります。
2. 受入側(施設・企業)の必須要件
雇用条件の適正
- 報酬は日本人と同等以上(基本給+手当の総合で比較)
- 法定労働時間・割増賃金・年休など労基法順守
- 社会保険・労働保険への適正加入
受入体制の整備
- 現場指導者(OJT)の配置、業務範囲の明確化
- 夜勤の扱い(配置基準・日本語力を踏まえ段階的に)
- ハラスメント防止・外国人差別防止のルール
支援計画(10項目)の実施
- 生活オリエンテーション、住居、口座、携帯、行政手続 同行
- 日本語学習機会の提供、定期面談、相談窓口、母語対応
- 転職・帰国支援、定着支援(地域交流) 等
支援計画は自社実施も登録支援機関へ外部委託も可能。ただし「最終責任」は受入企業側です。
3. 特定技能(介護)で採用できる人材の条件(概略)
- 技能試験:介護技能評価試験(介護の基礎・移乗・食事・排泄等)に合格
- 日本語:日本語能力試験N4以上またはJFT-Basic(A2相当)に合格
- 介護日本語評価試験:現場用語・記録に関する試験の合格が求められる運用が一般的
- 例外ルート:技能実習2号修了者等は一部試験免除あり
採用時は「合格証」「成績票」などの原本確認と写しの保管が必須です。
4. 社内フロー(最短の進め方)
- 採用計画の確定:人数・配属・夜勤体制・日本語要件・開始時期
- 支援方式の決定:自社実施 or 登録支援機関へ委託(契約)
- 雇用契約の素案:職務・賃金・就業場所・社会保険・試用期間 等
- 受入体制の資料化:OJT計画、シフト、指導者、ハラスメント規程
- 支援計画(10項目)の作成:下のテンプレをひな形に
- 申請書類の整備:理由書、雇用契約、支援関連書類、写真、各種誓約
- 申請取次:入管へ提出、補正・照会対応
- 受入後の実施・記録:支援の実施、面談、記録・報告の保管
5. 支援計画の「10項目」テンプレ(コピペ可)
登録支援機関に委託する場合も、施設側が把握・管理できる形で残すのが安全です。
| 項目 | 実施内容(例) | 記録 |
|---|---|---|
| ①事前ガイダンス | 労働条件、業務内容、宿舎、地域情報を母語/易しい日本語で説明(オンライン可) | 説明資料、参加者名簿、確認サイン |
| ②出入国・空港送迎 | 空港〜宿舎の移動手配、緊急連絡体制 | 交通手配記録、担当者 |
| ③住居の確保 | 賃貸契約支援、保証会社、家具家電の初期整備、通勤動線の確認 | 賃貸契約、設備リスト、写真 |
| ④生活オリエンテーション | 防災・医療・ゴミ分別・交通ルール・買物・町内会 等 | 実施チェック表、配布資料 |
| ⑤公的手続の同行 | 住民登録、年金/健保、銀行口座、携帯契約、マイナンバーカード | 同行記録、控え書類 |
| ⑥日本語学習の機会 | N3/N2を目標にeラーニング補助、学習時間確保(週1〜2h) | 受講ログ、費用補助の記録 |
| ⑦相談・苦情の受付 | 母語/英語対応の相談窓口、匿名相談箱、第三者ライン | 相談受付簿、対応履歴 |
| ⑧定期面談・巡回 | 入社1か月、3か月、6か月、その後は半期ごとに面談(職場・生活の両面) | 面談記録、KPI(離職率/勤怠) |
| ⑨交流・地域連携 | 施設内イベント、地域日本語教室の紹介、交流会 | 参加記録、写真 |
| ⑩転職・帰国支援 | 契約終了時の届出、帰国手配、次の受入先の紹介(法令順守) | 届出控え、実施記録 |
6. 現場運用:OJTと安全のライン
- OJT設計:介助手順(移乗・食事・排泄・入浴)の標準手順書+写真/動画。ペアリング指導を原則。
- 夜勤導入:まずは日勤で適応→日本語と技能を評価→段階導入。配置基準・緊急時連絡を明文化。
- 記録(日本語):短文テンプレ+ピクトグラムの併用で誤解防止。略語集を整備。
- ヒヤリハット:月次レビューと再教育。母語での再説明も。
9. よくあるNGと監査で指摘されやすい点
- 支援計画の未実施・未記録(実施したが証拠がないのもNG)
- 賃金台帳と雇用契約の齟齬(基本給/手当/控除の食い違い)
- 夜勤配置の安全性評価の欠如(日本語・技能の段階評価がない)
- ハラスメント相談ルートが名ばかり(実効性のある第三者窓口が望ましい)
- 離職者の届出・転職支援の遅延
「実施した事実」を文書・チェックリスト・写真・ログで残すことが最大の防御です。
10. 費用感(目安)
- 申請取次(1名):132,000円〜(当事務所目安。実費別)
- 登録支援(外部委託・月次):1名あたり 22,000円/月〜(人数逓減あり)
- 社内体制の初期整備:規程・OJT手順・書式の作成支援は別途
詳細は 報酬表 をご確認ください。
10. FAQ
・夜勤はすぐに任せられますか?
段階導入が安全です。まず日勤で日本語・技能を評価し、評価表に基づいて夜勤へ移行します。
・ 支援計画は外部委託すれば施設側は何もしなくて良い?
いいえ。最終責任は受入企業です。実施状況の確認・記録の保管は施設側でも行うべきです。
・ 家族帯同はできますか?
特定技能1号は原則不可です。長期的に帯同を希望する場合はキャリア設計を含めて相談ください。
ここから一緒に段取りしましょう。


