農地と宅地の転用手続き 完全実務ガイド

段取り、今日決めましょう。
日程・場所・やりたいことが分かればOK。やるべきこと・最短ルートをご提案します。

1. 用語と法令の全体像

農地転用(農地法)

農地を農業以外の目的で使うこと。4条は「所有のまま用途変更」、5条は「権利移転を伴う用途変更」(売買・賃貸借等とセット)。条文の根拠と制度趣旨は農地法にあります。

宅地化・造成(都市計画法等)

造成や区画変更などの開発行為は都市計画法29条の許可対象になり得ます。基準や面積要件は政令・条例・区域区分で変動(全国共通の数値だけで判断しない)。

補足:農業振興地域(通称:農振)制度は、市町村が将来も農業で守るべき区域を線引きする仕組み。農用地区域(青地)内は原則転用不可で、先に「農振除外」の手続きが要ります。

2. 許可が必要なケース/不要なケース

区分具体例農地法の手続他法令の留意
農地→住宅・分譲・駐車場・資材置場 自宅建築/月極駐車場/倉庫ヤード 4条(自己転用)/5条(売買・賃貸+転用) 区域や規模により開発許可・建築確認。
宅地→農地(再転用) 家庭菜園用に畑へ戻す 自治体手続(農地への転換可否の確認) 上下水・土壌・排水等の実現性に注意
農地以外(雑種地等)の活用 既に地目が宅地・雑種地 原則、農地法の転用許可は不要 ただし都市計画法/建築基準法要件は別途審査。

注意:「農地法の許可=建築できる」ではありません。接道義務(建基法43条:4m道路に2m以上接する)を満たしていないと建築不可です。

3. 転用の標準フロー(実務6+αステップ)

  1. 現況・法令調査:地目・農振(青地/白地)・都市計画(市街化/調整)・道路種別(建基法42条)・ハザード図
  2. 事前相談:農業委員会/開発指導課へ概要持参(用途・面積・配置・工程)
  3. 図面・同意の整備:位置図/平面図/求積図/土質・排水計画/必要に応じ隣地承諾(自治体で運用差)
  4. 農地法4条 or 5条 申請:指定市町村か都道府県知事の許可(所在自治体の権限区分を要確認)。
  5. 造成・開発・建築手続:規模・区域により開発許可(都計法29)→建築確認の順。
  6. 転用後手当:利用開始・必要に応じ地目変更登記(司法書士と連携)・標識設置等の指示履行
+α 実務メモ(工程短縮のコツ)
  • 求積図・座標表は測量士関与で整合性を担保(審査の差戻し防止)。
  • 農振除外(青地)の可能性があれば最初に見極め。開発計画の前提が変わります。
  • 道路が建基法の「道路」(42条)かを役所調査で確定。接道が不十分なら計画修正。

4. 必要書類・図面要件と隣地承諾の運用

代表的な提出物

  • 申請書(4条/5条)・事業計画書
  • 位置図・平面図・配置計画・求積図(座標付)
  • 登記事項証明書・公図・地積測量図
  • 排水・擁壁・のり面計画(必要時)
  • 同意書(隣地・道路管理者・水利組合など自治体運用による)

図面の精度が審査を左右

配置・面積・排水系統の矛盾は即差戻し。民地・里道・水路の区分や道路種別(42条各号)に注意。建築前提なら接道長さ・セットバックの可否まで先読み。

隣地承諾書:要否は自治体ごとに差。道路付替え/排水放流/擁壁等が絡むと要請されやすい運用。早期に範囲と説明資料を準備。

5. 農振(青地)・市街化調整区域・開発許可の要点

  • 農振(青地):原則転用不可。まず「農振除外」を検討(市町村手続)。除外が通らない計画は以降の申請へ進めません。
  • 市街化調整区域:原則開発抑制。例外は都計法34条の各号(地域・条例で運用差)。個別に特例該当性を精査。
  • 開発許可(都計法29):面積・内容で許可要否が変わる。政令上の基準(「政令で定める規模=1ヘクタール」)と、自治体の条例基準を両方確認。
  • 指定市町村制度:一部市町村が知事に代わって農地転用許可を実施。窓口・審査体制が異なるため事前確認必須。
実務TIP:開発許可の要否や手続順の誤りは致命傷。農地法許可→造成→建築確認の一本道ではなく、併行で図面精度と要件整合を詰める工程管理が重要です。

6. 事前セルフチェック(10項目)

  1. 地目:登記簿・現況が一致しているか(遊休地でも現況農地なら農地扱い)
  2. 農振:青地/白地・除外要否を判定(役所ヒアリング必須)
  3. 区域:市街化/調整の区分と34条特例の可能性を確認
  4. 道路:建基法上の道路(42条各号)に2m以上接道できるか(43条)
  5. 面積:造成規模が開発許可基準に抵触しないか(政令+条例)
  6. 排水:雨水放流先・水利承認・浄化槽/下水接続の可否
  7. 擁壁:既存擁壁の適法性・新設時の構造計算の要否
  8. 同意:隣地・道路管理者・水利組合などの同意要否を先読み
  9. 工程:農振除外→農地法→開発→建築の順でクリティカルパスを設計
  10. 体制:測量士・設計者・(登記は司法書士)・施工の連携線表を作る

7. よくあるNG/不許可・保留の典型

  • 青地の見落とし(除外前提なのに図面作り込んで時間ロス)
  • 接道義務未達(建築不可なのに事業化を進めてしまう)
  • 開発許可の面積基準を条例で誤認(地域差の把握不足)
  • 求積誤差・排水系統不整合(審査差戻しの筆頭)

8. FAQ

Q. オンラインで完結できますか?

事前調査・打合せはオンライン可。ただし現地確認・測量・隣地調整・一部の原本確認は対面や現地立会いが必要です。

Q. 期間の目安は?

個別条件で前後しますが、農振除外があると長期化、農地法4・5条は概ね1–2か月、開発許可・造成・建築確認を含めると計2–6か月以上を見込みます(自治体・規模・図面精度に依存)。

ここから一緒に段取りしましょう。

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